2019年の世界平均気温は「史上2番目の高さ」となり、温暖化に歯止めがかからない状況でした。
そのため今年の冬は暖かった記憶はありませんか?

首都圏では雪が降らず、毎年ニュースになる「雪で交通が乱れた」というニュースもほとんどなかったと思います。

ラボの正木が白馬で取材に行った時、現地の人にお話を伺ったところ、今年の冬は暖冬で雪が積もらず、各スキー場ではスキー客の減少が続き、雪不足のため、閉鎖するスキー場も相次いでいたのです。

暖かい冬は、生活にあたっては恩恵を受けます。
例えば、野菜は暖冬でかなり安くなりました。

平年に比べ、キャベツやレタスは4割、大根は3割、ねぎやほうれんそうは2割ほど価格が下落したのです。
とはいえ、野菜が高く売れないということは農家にとっては利益があがらず、今年売上を落としたところも多かったと言います。

目次

暖かかった日本列島

気象庁によると、昨年12月から今年2月の降雪量は、平年に比べ北日本で44%、東日本が13%、西日本では6%と低水準でした。
過去を振り返ると、2007年が降雪の少ない年で、北陸地方の降雪量は平年比の9%減。

そのため、今年と同様に水不足が懸念されたのですが、夏場の雨量が多かったため、深刻な事態にならなかったのです。
しかし、これは夏に雨が降ったという、幸運な面が大きく、今年の夏にまとまった雨が期待できる保証はありません。
さらに雪不足は平地だけではなく、高地でも深刻なのです。

防災科学技術研究所によりますと、今年の冬は豪雪地帯でも雪は降らず、ここ30年で最も積雪深が少なかったのです。
とはいえ、近年日本では、台風やリラ豪雨が頻発しており逆に水害が多く、水不足なんて現実的に起こるの??
と思いがちですが、日本の降水の特徴として、梅雨期、台風期、降雪期に集中しており、それ以外の時期の雨は、実はあまり多くないのです。

 

暖冬だったらどうなるの??

過去を振り返りますと2010年代で最も暖冬だったのは2015〜2016年の冬。
2016年は雪が少なかったことにより雪解け水が少なく、ダムの貯水率が低下。
その結果、6月から利根川水系で「取水制限」が始まりましたが、「給水制限」にはならなかったため、あまり「水不足」を感じた方は少なかったと思います。

 

貯水できない日本の地形

日本の水源の大半は河川に頼っています。
しかし、日本は地形的に急斜地や短い河川が多く、水が溜まりにくいと言います。

また、人が利用できる水は、河川や湖沼を合わせても約0.01%(0.001億キロ立方メートル)でしかなく、98%が海水で、その大部分は南極や北極の氷山などになり、私たち陸上生物が利用できる水は、全体の 0.01%にも満たないのです。

そのため、雪がキーポイントになるのです。

 

水不足が起こりやすい日本

実は常に渇水不安と隣合わせにいる日本。
最近では給水制限などなく、コンビニを見ると水がずらりと並んでおり、蛇口をひねれば、美味しい水が出る国にいる思いがちですが、過去には、日本も水不足に悩まされる時代が数多くありました。

有名なのは1964年の「東京オリンピック渇水」。
高度経済成長期に人口が増えたこともあり、産業が発達、水の需要が伸急速に上がったのです。

しかし、当時は64年は東京オリンピック。
選手への負担を減らそうと、都市部で一日のおよそ半分に当たる45%の給水制限がありました。

この当時、自衛隊が給水車を出動させ、家庭では、バケツを持って水を汲みに行く、今でいう被災地で見られるような光景があったのです。
これも昔のことでしょ??
と思うのはおやめください。

今年の暖冬のように、雪不足で、降雨量が少なく進行すると給水制限が起こる可能性があります。

 

現在の貯水量はどれくらい??

現在、4月15日現在では、ダムの貯水量、平年に比べる量ともに、100%に近く問題はありません。
しかし、今年は暖冬でした。

ダムの役割として、雨水を溜めるというのはご存知だと思いますが、雪解け水が川に流れ、ダムにそそぎ、5月以降雪は貴重なダム資源なのです。

本来であれば、4月、5月にかけて、ゆっくり雪が解けて5月、6月以降ダムを満たす水はフルの状態なのですが、雪が今年はないのです。

また、ダムの水は飲料水だけではなく、例えば、これから来る5月の田植えの時期に水が多く使われます。
そして、この時にダムに貯めている大半の水を使ってしまうのです。

雪山はいわば自然のダムなのです。
極端な雪不足で農業の水不足が心配されてことも合わせて、関東では、大規模な渇水につながる恐れもあります。

そのため、夏にかけてまとまった雨が降らず、このまま平年並みの雨しか降らないとなると、田植え時期が終わる5月、6月中に、最初に取水制限が来ないととも限りません。

 

標高が高い所はどうなの??

平地では少ない積雪量ですが、標高の高い場所の雪はどうなっているのでしょうか?
防災科学技術研究所によりますと、通常3月下旬で2mほど積雪がある標高300~500mぐらいの山を見ますと、同時期に雪がゼロになった地域があるのです。

雪がゼロということは、雪解け水が供給されないため、その下の地域では田植えの時期に必要な水が不足すると思われます。

また、米農家の水不足だけにとどまらず、暖かくなると、害虫が活動を時期が早まることによって、苗の時期に虫害が起きることが想定されます。

 

暖冬は農作物以外の被害を起こす恐れも

さらに、標高が高いところに雪がないということは、広範囲に渡り、シカが食糧となる木の若芽が多く顔を出し、シカ問題にも発展する可能性もあります。
シカ問題とは、単純にシカが増えて農作物を荒らすということだけではなく、高度経済成長期に植林された、「地盤が固まっていない人工林」が荒らされ、山崩れが起こりやすくなるのです。

 

あとがき

温暖化影響で、雪が今後日本から消えるのでは??
と思った方もいるかもしれません。
しかし、東北大学大学院の佐々井崇博助教たちの研究グループによりますと、温暖化が進んでも、雪が無くなる訳ではなく、北陸や長野と言った豪雪地域では、今よりも強い豪雪が高い頻度で起こるようになると結論づけました。

なぜか??

主な理由は2つあげられています

・温暖化によって、雪の大元となる大気中の水蒸気の量が増える
・平均気温が上がることによって、寒気との温度差が大きくなるため雪雲が発達しやすくなる

そのため、降らないところは、この先も降らない。
豪雪地帯はもっと豪雪になるという極端なことが想定されているのです。

ゲリラ豪雨も、最近では極端な例が多くなっています。
また6年続けて台風や集中豪雨による大災害が起きています。
そして、今年も水不足も懸念されますが、ゲリラ豪雨や台風と言った災害も想定されます。

そのため、仮にコロナが収束し元の生活に戻っても、備えは十分に行い、日々の生活を送りたいものです。