地球温暖化の影響は様々ありますが、海の場合は水面上昇と海水温の上昇です。
海面上昇の主な原因は、海水の温度上昇による膨張と氷河や氷床の融解であると言われてい て、1901-2010年の約100年の間に19cm海面が上昇しました(IPCC第5時報告書より)。

一方、日本近海の海水温上昇率はここ100年で約+1.12度です(平成31年3月11日気象庁地球 環境・海洋部発表)。
これは世界全体の海水温上昇率+0.54度を大きく上回っており、気温の上 昇率とほぼ一致しています。
この影響で、最近では三重県志摩市の英虞湾で、冬の海水温が高すぎ たことにより、真珠の養殖に使われるアコヤガイが大量死したというニュースが届きました。

台風は暖かい海面から供給された水蒸気が凝結して雲粒になるときに放出される熱をエネル ギーとして発達します。
となると当然、温暖化により海水温が暖められると台風は、勢力の強い まま日本列島にやってくる可能性が高まるのです。
そして、昨年、大阪を襲った台風21号、そし て今年、首都東京を襲った台風15号、19号と、たて続けて勢力の強い台風がやってきて、大きな 被害が出てしまいました。

温暖化対策がなかなか進まないのは、その影響が目に見えて分からないから、とよく言われますが、実際には我々の生活に多大な被害を既に与えているのです。

今回温暖化をはじめとする気候変動が止まらない中、ある取り組みをしている施設に実際に行ってきました。
那覇空港から車でおよそ1時間。
駐車場から歩いて崖を降りていくと金城浩二さんが代表を務め る「サンゴ畑」の施設が見えてきます。
ここはサンゴの養殖施設です。

サンゴに適した水温は25℃から28℃といわれています。
そして、水温が30℃を超える状態が長 期間続くとサンゴを構成する褐虫藻に異常が起こり、白化を引き起こします。
また最近の急激な 気候変動や海洋汚染も重なり、世界中のサンゴが生存危機を迎えています。
国際自然保護連合 (IUCN)などの調査によると、地球上に存在するサンゴの3分の1の種が絶滅の危機に晒されて いるということです。
また、アメリカ海洋大気庁によれば、ハワイ島やオアフ島にあるサンゴ礁 の56%が白化していると報告しています。

そんな中、金城さんはおよそ20年前からサンゴの養殖 に取り組み、あわせて海の環境保護を訴え続けていらっしゃいます。

金城さんのサンゴ畑は一般開放していて、海に入らないと見ることができないサンゴの様子が 誰でも間近で観察することができるよう、様々な工夫がなされています。
子供たちにも是非きてもらいたいと、施設全体がやや海底都市風?なデザインになっていて、配置されている水槽には、 たくさんのサンゴの鉢植えが並んでいます。


ここである程度成長させた後、目の前の海に移植していきます。
この移植体験も予約すれば誰でもできる仕組みになっていて、このあたりもサンゴというものを遠い存在として捉えて欲しくないという想いが込められているのでしょう。

そんなサンゴ畑で、実は最近思わぬ発見があったのです。
人工的な水槽ですから、実際にサンゴが自然の海で生息する深さを作ることが難しく、サンゴ畑を始めた頃は自然の海よりも強い紫外線、高い水温の中での栽培をせざるを得ず、なかなかうまくいかなかったそうです。

ところが栽培中のサンゴたちを細かく見ていくと、死滅してしまもものもあれば、中にはその厳しい環境下で生き延びている個体があることが確認できたのです。
つまり、温暖化による海水温上昇に適応しているサンゴを発見したのです。
このサンゴは「ミラク ル・コーラル」と呼ばれ、今では大学の機関と共同で、遺伝子レベルまで研究が進んでいるそうです。


沖縄の海といえば、コバルトブルー、エメラルドグリーンなど、思いつく色の表現だけでは語り尽くせない美しい海がまだまだ残っています。
米軍施設の移転問題で揺れている辺野古周辺の海域にも、透明度が非常に高く、貴重なサンゴの海が広がっています。

ちなみに先日、米環境NGO団体、ミッション・ブルーが選ぶ世界で最も重要な海域「ホープスポット(希望の海)」に、沖縄県名護市の辺野古周辺海域が認定されました。
日本の海域が選ばれたのは初めて。
併せて、当NGOは米軍普天間飛行場の移設に伴う開発で希少な生態系が失われるとして工事の見直しを呼び 掛けています。

その海でものを言わず、静かに海の中で暮らしているサンゴ。
サンゴが地球上に誕生したのは、人類が誕生した約250万年前よりはるか昔、約4億年前といわれいます。
環境の変化に適応し ていく能力は人間よりもはるかに高いと言わざるを得ません。
最近の急激な気候変動により、サ ンゴよりも人間の方が先に絶滅してしまう?
そもそもその急激な気候変動を引き起こしている要因が人間にある訳ですから、気候変動を和らげていく活動は不可避です。
それもかなりのスピード感を持ってやっていく必要があることを、沖縄の海を見ながら感じました。