アフリカゾウが15分に1頭殺されていることをご存知ですか。
このままのペースで進むと、10年後に絶滅するという現状があります。
世界では国際社会問題として、大きく取り上げられていますが、日本ではほとんど知られていません。
目次
半世紀で1/10に減少したアフリカゾウ
1930~1940年代、アフリカ大陸には500万頭ほどのアフリカゾウがいたと推測されています。
そして現在は47万2000~69万程度まで減少。
国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、絶滅危惧II類に指定されてます。
なぜゾアフリカが減少しているの?
毎年約4万頭のアフリカゾウが殺されているのですが、それは…象牙を得るための密猟。
象牙といえば、かつて日本では高級な印鑑や三味線のバチの材料としてお馴染みでした。
また中国では繊細な工芸彫り物に、欧州や米国ではピアノの鍵盤、ビリヤードの球などに使用されてきた事実があります。
なぜゾウの密猟が止まらないのか?
密猟が絶えないのは、未だに象牙が破格の値段で取引されるから。
象牙市場は、アフリカゾウを保護するために、1989年の取引規制によって世界では軒並み縮小したのですが、90年代半ばからアジアの市場、特に中国とタイが拡大しました。
両国では経済成長により中間層、富裕層が広がり、象牙需要が一気に増えたのです。
つまり、今でも象牙を買う人は減らないのです。
象牙最大の消費国は日本だった過去
アフリカゾウ乱獲の歴史は1970年代にさかのぼります。
それは日本で象牙がブームになり、大量消費が要因の1つでした。
高度経済成長期、人々はこぞって象牙の印鑑などを買うようになります。
アフリカゾウの象牙の3分の2を日本人が消費していたのです。
その後、1989年。
前述しましたワシントン条約により象牙の国際取り引きは禁止され、乱獲に歯止めがかかります。
ところが、9年後、事態は一変しました。
きっかけは合法象牙の取り引きが制限付きで認められたことでした。
死んだゾウの象牙を市場に出すことは輸出国と消費国、お互いの利益にかなうと考えられたのです。
これまで2回にわたり取り引きが許可されています。
輸入を求めた日本と中国が許可を受けました。
しかし、このことが密猟による象牙ビジネスを刺激。
そのため、象牙市場が再び活性化し、価格が高騰。
日本でも違法な象牙が摘発される事件が相次ぎました。
この現状を変えるため、違法な象牙が流通しないよう日本政府は、ワシントン条約以前の象牙と合法象牙に登録を求める制度を設定しました。
密猟に悩むアフリカ諸国や環境保護団体は「全ての国内市場の閉鎖が必要」と主張していますが、日本政府の発表はこちら。
「日本の市場はきちんと管理されているので、閉鎖の対象ではない」。
しかし、最近では日本の中でもずさんな規制の運用が指摘されており、登録証を悪用して象牙を売買するなどの事件も発生。
密猟象牙が出回っている可能性が大きいのです。
また、サイの角の取引額も増加しており、年間で推計6380万~1920万ドル。
密猟されたサイの数は2007年には50頭未満でしたが、2013年には1000頭以上に増加しているのです。
密猟で生活費を稼ぐしかない生活者
誰でも銃を使えば簡単にゾウを殺すことが出来ます。
もちろん監視は徹底され、銃撃戦になることもあるのですが、監視している警察や軍隊も、賄賂をもらって密猟を見逃す事実もあります。
また最近では密猟者はヘリコプターからゾウの群れを見つけ、地上の仲間に教えるシステムをとっているのです。
そして地上でゾウを撃った後は、死後硬直が起きる前にチェーンソーで顔面を切断し、象牙を抜き取るという。
その象牙を渡すわけですが…
現地の密猟者に支払われている象牙の値段は、1kgで約1.5万円と言われています。
平均で見るとと大体、残っている個体から13.5kgぐらいの象牙が取れ、現金収入にして約20万円。
現地の人にとって、年収をはるかに超えたキャッシュ収入が一瞬にして手に入るのです。
それが、人をすごい迷わす道なんですが、現地の人も「生活者」の面を持ちます。
ゾウを殺して象牙を売るのは、手っ取り早く、かつ数少ない金儲けの手段になっているのです。
象牙で儲かった資金はどこに?
アフリカにおける像の密猟は監視を日々強めており、一般の密猟者が、捕獲しようと思ったところで、実行はほぼ出来ません。
では資金はどこに渡っているのか?
それがテロ組織。
密猟で得られる資金が、隣国ソマリアのイスラム過激派アル・シャバーブに流れ、テロ活動の資金源となっているのです。
その額は活動資金の40%が密輸象牙取引というもの。
アッシャバーブは、地元と人々に銃を渡し、貧しい村人に密猟をさせ象牙を手に入れてるのです。
密漁は取締り側との銃撃戦で命を落とすこともある危険な仕事ですが、住民がアッシャバーブの誘いなどで密猟に手を染めるのは、仕事が見つからない、干ばつで家畜が死んで生活ができなったなどの、厳しい生活状況があったからでした。
世界が起こした行動とは??
元アメリカ国務長官 ヒラリー・クリントン
「テロリストたちは活動資金を象牙の密輸で得ている。アメリカの人々の安全を脅かしている。密猟の犯罪者に対し、私たちは行動を起こします。」
その結果、アメリカは、国内での象牙の商業取り引きを全面的に禁止しました。
また、フランスでは、パリの中心部で違法象牙を粉砕。取り締りの強化を宣言しました。
あとがき
インドなどに生息するアジアゾウはどうなのでしょう?
アジアゾウは、メスにはまったく牙がなく、オスも9割が象牙を持たない。
そのため、現在13万頭が農耕、作業用になっているのですが、イギリスの科学雑誌ネイチャーによりますと、野生の状態で捕獲され強制的に労働をさせられたアジアゾウは、飼育下で生まれたゾウに比べて平均寿命が5年短いと言います。
[…] アフリカゾウが絶滅の危機 ゾウの密猟は犯罪組織の資金源になる真実 […]