温暖化の影響もあり、今年の夏、日本では水不足が心配されています。
現在の世界的問題といえば、もちろんコロナ収束に焦点が絞られていますが、パンデミック以外にも、いま地球規模の課題として深刻なのが「水不足問題」。
水は生活に無くてはならいないものでありますが、日本で暮らしていますと、水が不足することって本当にあるの??
という感覚になります。
しかし今、国連、WHOでは、最も早急に解決を迫られている環境問題の一つなのです。
現在、世界の約7億人が、水不足の状況で生活しています。
それはコロナと匹敵するほど深刻な状況で、国連水資源報告書によりますと、世界では、不衛生な水しか得ることが出来ないことによって、毎日4900人、年間では約180万人の子どもたちが亡くなっているのです。
また、人口増加に伴う食糧需要の拡大が起こっており、それに対応するためには、2025年までにナイル川 20本分の水を確保する必要があると言われています。
目次
実は使える水の量は少ない地球
地球で飲み水として利用できる水は全体の0.01%にも満たしません。
実は98%が海水で、淡水は2%、その大部分は南極や北極の氷山になるため、利用できる量は想像よりはるかに少ないのです。
22億人が安全な水を飲めない現実
日本では蛇口をひねると、「飲める水」として出るのが普通ですが、世界を見ると、安全な飲み水が飲めない人は22億人。
年々、改善された飲料水源を利用できる割合も増えており、以前よりは水に関する問題は前進しています。
しかし、管理された安全な飲み水を飲めない人達のうち、約7億8500万人の人は、いまだ水質改善のめどが立たずに暮らす状況であり、約1億4000万人は未処理の地表水を利用得ざるを得ない現状なのです。
今後、この数は減少する訳ではなく、もっと上昇すると予測されており、2050年には水問題が本格的に起こるのです。
水不足問題の要因として、世界人口の増加や気候変動などが挙げられます。
特に人口増加や気候変動は深刻であり、対策や改善を行っていかなければ、いずれさらに深刻な水不足になることは先述した通りになります。
では、それぞれの原因について見ていきましょう。
世界人口の増加による水不足
世界人口は年々増え続けています。
2019年現在、約77億人が地球で暮らしています。
そして2050年まで人口増加が進むと、その人口は約97億万人。
この先30年で20億人の増加が予想されています。
現在でも水不足が起こっているにも関わらず、今後人口が増加すると使用する水の量も増加。
また、人口増加に比例して食糧の生産増加が迫られるのです。
食糧危機からの水不足
食糧を増産するための水の消費は50年前に比べて3倍に増加しています。
例えば、小麦などの穀物の栽培には大量の水が必要となり、1㎏の穀物の生産に対し、使用する水の量は1トン以上。
つまり1000倍の水が必要となり、水不足と合わせて食糧の不足へと発展するのです。
人口増加に伴って、食糧を増産する必要が出てきます。
農地を広げるために、今まで農地ではなかった乾燥地帯において灌漑農業が行われるようになりました。
それにより、さらに大量の水が必要となり、例えば黄河やアラル海が干上がった原因と言われるのが大規模な灌漑農業。
上流域で大量の水を河川から汲み出したため引き起こされたのでした。
また、アメリカやインドでは地下水が枯れたところも多くなっており、そのため農業用水が無くなり農地が減り始めています。
現在、世界の食糧生産の4割以上を支えている灌漑農業は、今後、生産量を維持することが困難となり、食糧不足が懸念されているのです。
2025年の予測水使用量は、30年前の1995年の1.37倍、生活用水については1.83倍になると予想されています。
水の需要としまして、上記にある生活飲料水は意外と少なく、世界の水使用量で、年間約3兆7,500億m3のうち農業用・工業用が全体の90%近くを占めており、特に農業用が約70%を占めているのです。
日本も水の輸入国
日本はまとまった降雨量がありますため、水は輸入する必要あるの??
と思うところですが、ご存知の通り、日本は多くの食料を海外からの輸入に頼っています。
輸入する食料を生産するために、多量の水資源を消費しており、日本は間接的に多量の水資源を輸入しているという訳なのです。
日本が輸入している大豆や小麦は100億トン。
牛肉は150億トンの「仮想水」を輸入しているのと同じなのです。
計算しますと日本の輸入品(農産物や工業製品)のために使われている「仮装水」は全部で約 800億トン。
日本の水使用量全体の約830億トンとほぼ同じ量の水を海外で消費しているのです。
例えば、輸入された米、輸入された牛肉で作られた牛丼を食べるということは、海外で使われた数トンの水を消費していることと同じことなのです。
過去に起こった水紛争
日本は国土が隣国と接していないため、水紛争にはなじみがありませんが、水不足の問題は未来への問題という訳ではなく、過去人類が繰り返してきた紛争にも発展する可能性があります。
陸続きで河川を挟むような国同士では、このような紛争が起こってきました。
紛争といっても戦いが起こったわけではなく、国家間の対立が起こっています。
国際河川では、河川の水量よりも上流での水需要が多くなり、下流の国の水が枯渇することは多くあります。
そこで国家間の紛争が勃発するケースがあるのです。
こうした地域は今後、人口が増加するにつれてさらに増えると予測されています。
【世界の水紛争例】
すでに紛争が起きた地域
- ドナウ川(スロバキアとハンガリー)
- リオグランデ川 (アメリカとメキシコ)
- インダス川 (インドとパキスタン)
- 漢江(北朝鮮と韓国)
- ガンジス川 (インド、ネパール)
- チグリス・ユーフラテス川(トルコ、シリア、イラク)
- ナイル川( エジプト、エチオピア)
気候変動による水不足
気候変動も大きな原因となっています。
地球温暖化による影響で近年は大雨による水害や、干ばつによる深刻な水不足が各地で起こっています。
このまま異常気象が続くと、砂漠化が進行し、水不足だけでなく、人が住める地域が狭くなってしまう問題にも発展する恐れもあります。
コロラド大の研究によりますと、地球温暖化の影響で赤道~中緯度にかけての島しょ部の約4分の3が、2050年までに渇水に陥るという試算を発表。
気温が上がることで雨水の蒸発量や植物から水が蒸散する量が増加。
熱帯や亜熱帯を中心とする世界的な80の諸島のうち、73%の諸島で降水量を上回ると推計したといいます。
ヒマラヤの雪が無くなるとどうなる??
ヒマラヤの氷や雪は、多くの川の水源となっています。
インダス川、長江、ガンジス川、ブラマプトラ川といった大河に注ぎ、南アジア一帯に住む数億人の生活を支えいます。
しかし、温暖化の影響で、ヒマラヤの氷河融解が加速。
日本でも山の雪解け水が利用されているように、雪が無くなると水源が失われ、水不足を招きます。
また急激な氷河の融解は洪水を招く危険性があり、すでにネパールでは被害も出ています。
あとがき
日本でも今年の夏に懸念されている水不足。
防災と同じように、日ごろからの備えや心構え、水の使い方を見直すことも大切となってきます。
まずは無駄に使わないこと。
被災時もそうですが、水はいつでも手に入るものではありません。
日々の生活で、一度水が少ない暮らしを体験しておくのも一つの手です。