「アパルトヘイト」という言葉を学校の教科書で習ったことがあると思います。
アフリカーンス語の「分離、隔離」を意味する言葉が由来で、かつて南アフリカで行われたいた人種隔離政策という格差を助長する政策でした。

そのアパルトヘイトが、現在形を変えて、「温暖化」によってももらたされているという現状があります。
気候変動によって、すでに、私たちの生活や、地球の姿は大きく変化しています。
この変化に対し、お金を使い、解決する方法をとる方は多くいる一方、対応する資金が無い人はより、温暖化による生活苦になっているのです。

それが今回ご紹介する「気候アパルトヘイト」。

富裕層と貧困層とでは、気候変動による問題に対応する能力が異なり、さらに結果として貧富格差を広げてしまう現象のこと。
気候変動は、人間によって発生し、産業革命時から地球の平均気温が約1℃上昇していることに起因しており、今後、さらに2050年までに4℃上昇すると言われており、現在でも多くの人の生活が脅かされているのです。

例えば、海面上昇によって、住む場所を奪われている人達や気温上昇のため、水不足になり脱水症状を起こし、それが原因で腎臓病患者の増加。
雨不足で、食糧供給による問題が発生し飢えを深刻化、また大洪水になると、感染症も流行したりします。

この問題に対し、お金に余裕があるならば、対応することは可能でしょうか?
分かりやすい例では、ハリウッドに住むセレブは、自らを守るため、大金を払い、警察や消防を自前で雇い、防災・防犯を買っており、富裕層だけがこの事態をうまく対処できます。

しかし、その余裕がない人はできません。
そして、この言葉が途上国だけでなく、先進国でも強く意識されるようになっているのです。

国連による持続可能な開発目標(SDGs)に掲げられた
「誰一人取り残さない」
という理念は失敗に終わるとの批判を受けています。

 

貧困層は7倍以上の環境リスク

2019年、国連で地球温暖化問題について提唱されましたのが「気候アパルトヘイト」。
提起したのは、貧困と人権に関する国連の特任リポーターであるフィリップ・アルストン氏。
現在、1%の富裕層が90地球上の富の50%を保有していると言われ、下位50%の人たちの所有している富は、わずか1%に過ぎません。

そして、今世紀において貧しい国の人々が自然災害で亡くなる可能性は、裕福な国の市民の7倍にも達しており、このギャップは気候変動が進むほどに拡大することが伝えられました。

フィリップ氏曰く
「裕福なエリートが何もせず、引き続き化石燃料への投資から利益を得続けているかぎり、われわれは気候アパルトヘイトという体制のもとにあります。
しかし気候アパルトヘイトという言葉で重要なのは、南アフリカのアパルトヘイトが崩壊したのと同じように、努力によって防げること。
世界各国で協力し、化石燃料から再生可能エネルギーに転換する計画を進めなければなりません」。

しかし、世界の覇権を握るアメリカと中国、2国の協力は少ないのが現状。
世界で最も経済的に豊かなアメリカが、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱するのに対応し、中国でも依然として温暖化防止による国策は少なく、状況は変わっていないのです。
気候変動を引き起こしている温室効果ガス排出量のうち半分は、世界で最も裕福な10%の人間によって排出されたものです。

しかし、気候変動が引き起こす害のうち75%を被ってしまうのは貧困層。
気候変動の原因を作った人々は快適になり、責任のない人々は苦しむのです。
さらに、それらの格差は国家間だけの問題ではありません。
同じ国民の間でも格差が拡大しています。そのため、最近では学者だけではなく、環境活動家のグレタに代表されるように、世界では若い世代で、この環境アパルトヘイトを防ごうとする声が上がっています。

 

アメリカでの不思議な現象

カリフォルニアでの山火事のニュースを目にしたことがあると思います。
例えば、2018年に発生した大規模な山火事。
毎年のようにこの地域では山火事が起こっているのですが、特に2018年の1年間は発生件数が多く、7000回以上の山火事で死者は100人を超えました。
そのため、火事のあった地域は、現在も焼け跡が生々しく残っているのですが、山火事の現場で、何事もなかったかのように富裕層の豪邸の一画だけが焼けずに残っているという不思議な現象があるのです。

それが、上記しました富裕層がお金を使い、自らの身を守ったことでした。

プライベートで消防士と契約するセレブは多いため、プライベート消防会社も増加しています。
1980年代からプライベート消防士の会社はあり、現在は全米に250社ほどあり成長産業なのです。費用は最大で1日約3000ドル。貧乏人には手がない出ない費用になるため、ただただ自宅が焼けるのをただ眺めるしかない。
という状況が発生したのです。

 

同国内でも「気候アパルトヘイト」が拡大

カリフォルニアでは、乾季になると、茶色い枯れ草になります。
そこに乾燥した季節風が風を送るため、いったん火が付けば、炎の燃え広がるスピードは加速します。

だったら、草を刈ればいいのでは??
と思うところですが、その作業は火を消すよりはるかに困難な作業だと言います。

この問題に対し、トランプ大統領はツイッターで知事を非難しました。
「毎年カリフォルニアの火事で出費がかさむ」。

これに対し知事は、ツイートで応酬。
「地球温暖化を信じていない人間から言われる筋合いはない」。

この山火事では、全米から約660の消防署から応援が駆けつけ、ピーク時には5245名の消防士が活動しました。
さらに、囚人たちも、時給1ドルで消防活動に参加。
カリフォルニアでは1946年から、このような囚人が消防活動に参加するプログラムがあり、現在、およそ2600名の囚人が作業に従事できる資格を持っています。
このような大規模な消防体制にも関わらず、山火事の拡大を防ぐことが出来なかったのです。

山火事後、多くの家庭では家の保険が10%ほど上昇。
物価高につれ、仕方なく州外へ引っ越す人が多くなり、温暖化による被害から立ち直ることも困難な貧困層が分離し、「気候アパルトヘイト」が国内でも顕著になったのです。

温暖化は経済活動によって引き起こされているのに、守られるのは富裕層ばかり。
アメリカではいま、若者を中心に、格差の拡大に怒りの声が広がっています。

 

世界の富裕層に広がる対策

来たるべき「最悪の事態」を考え周到な準備しているセレブを、アメリカでは「プレッパー」と呼び、市民の非難を受けています。
しかし、プレッパーは非難よりわが身が大切。

例えば、決済サービスの大手企業PayPalの創業者であるピーター・ティール氏は、有事の際にニュージーランドに移住できるよう現地の市民権と土地を確保。

また、フェイスブック社の元プロダクトマネージャーであるアントニオ・ガルシア・マルティネスは、アメリカ国内の森林を買い取り、発電機や何千セットもの弾薬を備蓄。

また、アメリカのメディア研究者であるダグラス・ラシュコフ氏の記事によりますと、プレッパーは食糧供給網に自分たちしか知らない特別なロックをかけることや、生存を保障するのと引き換えに奴隷に近いような労働力を雇う、または警備ロボットを開発し、自身の財産を守るのに利用することなど、想像を絶するような策謀をめぐらせている。

 

気候アパルトヘイトはさらに拡大する予想

研究によって推測されている気候変動によりますと、海面上昇や砂漠化・異常気象のため、2050年までには1億5千万から2億人もの気候難民が発生すると予想されています。
また気候アパルトヘイトが加速することで、10年後の2030年までに、1億2千万人の人々が貧困に陥るという国連の報告書もあります。

IT革命によって、情報の格差が無くなったのですが、気候変動によって、貧困格差の進歩を巻き戻してしまう可能性が出てきています。
またこのままでは人権だけでなく、民主主義や法の支配さえも脅かされる可能性があります。
日本でも災害弱者という言葉が使われるように、社会的に弱い層に、しわ寄せがいくということは認識されています。
今後、災害が繰り返されれば、気候アパルトヘイトは海外だけの話しではありません。

 

あとがき

環境問題を比較することはできませんが、一日でも早く「気候アパルトヘイト」の対策が必要ではないでしょうか?
前述のフィリップ氏によりますと、この問題を解決するには、再生可能エネルギーへの転換などと同時に、温暖化の影響を受ける人たちへの「補償」が必要だといいます。

「世界経済の深い構造変化を起こして、環境にやさしい持続可能な経済に移行しながらも、その間に一時的に失業した労働者に公正で安定したセーフティーネットを提供することにある」
とアルストン氏は説明。

しかし、地球温暖化への対策は、口ばかりで一向に進展していない現実があります。
資本主義となった全地球において、稼ぐことが正義で、そんなに苦しむなら、「頑張って抜け出せよ」という空気が蔓延していることも否めません。

稼ぐこと、他人より優位に立つことをこのまま続け、国際社会がお互いを牽制し合いながら進むと、気候変動の影響をもろに受ける地域へ、極端なしわ寄せがいくことが確実視されています。

今後、温暖化対策に合わせて、温暖化によってダメージを受ける人々へのサービスを掲げる企業が多く出てくるような社会システムが求められていると感じました。