象牙の密猟によってアフリカゾウは絶滅の危機となり、世界で広がる森林火災によって森が消滅のピンチを迎えています。

そして、本日紹介するのは、火災で消滅しつつある大切な森に追い打ちをかけるように、人の手により森林が破壊している現実があります。
温暖化の影響よりも、人によって地球から森が奪われているのです。

目次

世界の森林の消滅は人間のせい…

象牙を採るためだけにだけに、アフリカゾウが殺され、そしてその利益が、テロ資金となる事実。
こちらの記事でも紹介しましたが、実は、象牙だけではなく、それは森林伐採にも多く見られるのです。

国連とインターポールの報告書によりますと、象牙の売買、違法伐採、そして密猟など、あらゆる環境犯罪に関わる世界の産業は、年間700億~2130億ドルの収益を上げていると言われ、その多くが犯罪組織、武装集団、テロ組織の資金源になっているという。

そして、過去のレポートと比較すると、その規模は年々拡大しているのです。

 

世界の木材取引の30%を占める違法伐採

「森林犯罪」による取引額は年間推計300億~1000億ドルに上りこれは世界の木材取引の30%に相当します。
まず最大の森林伐採エリアのアフリカでは、消費される木材の約90%は、薪や木炭として使用されています。

さらに、自国の使用だけではなく、木炭としてエジプト、イエメン、サウジアラビア、オマーンなど、お金持ち国家である中東の数カ国へ違法な輸出が行われているのです。

例えば、ソマリアからの輸出額は年間3億6000万~3億8400万ドルと推計。

そのうち最大5600万ドルがテロ組織の資金となったのです。
過去ケニアで発生したウエストゲート・ショッピングモール襲撃事件に関与したイスラム過激派組織アル・シャバーブの支援に使われたと言われています。

日本と遠く離れているアフリカでの出来事で関心は薄いかもしれませんが、実は違法木材の問題は日本にも深く関係することなのです。

 

日本の住宅の多くはマレーシアの木材が使われていた??

ご自身の家の木材はどこから来たのかご存知ですか??
なかなか原産国まで、知っている人はいないと思いますが、森林国の日本にありながら、日本は木材輸入国に頼っています。

その輸入先として最大の国はマレーシア。
ボルネオ島を有し、手つかずの自然や広大な熱帯雨林であり、オランウータン住み家として有名なマレーシア最大の州・サラワク州が今回の舞台です。

そのサラワク州政府とマレーシアの木材伐採企業によって、違法伐採が行われ、豊富なサラワク州の熱帯雨林を激減させています。
さらに、違法伐採は森林破壊だけではなく、人の生活までも奪いさっているのです。
何世紀にも渡ってこのジャングルで生活してきた、先住民族の生活にも重大な影響を及ぼしてきました。

伝統的な法律や慣習を守り従い、狩猟や農耕などで生活する原住民にとって、熱帯雨林はまさしく生活そのものだったのです。
そのため、先住民族の土地に対する権利や慣習法上の権利は、マレーシア憲法においても認められていました。

しかし、豊富な森林資源に目をつけた地元マレーシア企業と、日本も含む国際的な企業が、彼らの生活を奪うことになったのです。

サラワク州における森林伐採や先住民族の土地に対する権利はマレーシア政府の管理するライセンス制度により保護されているはずでした。
しかし実際には、州政府は、先住民族の土地に対する慣習権を無視した、地元企業の伐採計画に対してもライセンスを乱発。
その結果、企業はライセンスのない場所でも違法伐採を行い、先住民の森林を暴力的に奪い、住民を追い出し、加工、輸入してきたのです。

 

違法木材は買わない欧米と、バンバン購入している日本・中国

1960年代後半から進めれた森林伐採。

このような環境破壊、人権侵害については1980年代から「サラワク・キャンペーン」という啓蒙活動が国際的にも展開されました。

これを受けて、欧米諸国は違法木材の購入をストップしたのですが、買い続けてきたのが日本と中国です。
特に日本はサラワク州の木材及び木材製品の主要な輸入国であり、恐らく、日本の住宅にもサラワク州の違法伐採材が多く使用されていると推測されます。
これにより日本は、世界の森林資源を食いつぶしている、特に「違法伐採」材を多く輸入していると国際社会から指摘されています。

 

なぜ日本は違法木材を買うの?

日本では、違法木材の輸入を防止する法的な枠組みとして、こちらが存在します。

  • グリーン購入法
  • 林野庁が策定したガイドライン等

しかし、この法律が問題だったのです。
民間部門に対し違法に伐採された木材の輸入を禁止したり、違反した輸入者に刑事罰を科す法令が設定されていないのでした。

また、林野庁のガイドラインに基づき「合法木材制度」という制度が作られていますが、これは民間の自主的な取り組みに過ぎず、合法かどうかは、例えばサラワク州に関していえば、州の認証文書があればOKとされ、独自の合法性審査の仕組みがありません。

これは、違法伐採した木材を輸入しないように、厳しい法規制を進めている他のG7諸国に比べて、かなり甘い審査であり、ほとんどフリーバスに近いのです。

自国の木を切らず、輸入に頼り安く家を建てる日本。
これで、温暖化を含む地球環境問題に率先して取り組む国の姿勢といえるでしょうか?

 

サラワク材を使っている日本企業

主要な輸入業者には、みなさんもご存知の大手商社や大手建設会社がずらりと並びます。
上記のように、違法ではないものを使用するという事だからそれは何ら問題ない。
このような考え方で合法的に、木材を使用しているのは分かります。

とはいえ、これを世界的にみて、重大なことだと認識した企業は改善を図っています。

例えば、双日は2015年に、違法伐採された木材の取扱いは行わないこと、森林伐採が及ぼす人権への影響軽減に努めること等を明記した木材調達方針を新たに策定しました
また伊藤忠では、マレーシアの大企業であるシンヤン・グループ(Shin Yang Group)とサムリン・グループ(Samling Group)に対して、第三者による調査と森林認証取得を働きかけるなど、改善のプロセスに入っているとしています。

鹿島建設では一部支店において、シンヤン・グループからの型枠合板調達を2014年から停止するよう契約業者に指導しているほか、代替材の使用を検討しているとしています。

一方、清水建設 はサラワク州での違法伐採問題を調達部門と傘下企業に問題提起したとの情報があります。

建設大手のなかでも、木材調達の見直しを検討している会社もありますが、対応はまちまちなのが現状です。

しかし、いずれも違法伐採材の流入を阻止するための抜本的な解決策としては不十分といわざをえません。

 

日本が木材を多く輸入している国の違法伐採問題

・インドネシア

インドネシア政府と英国政府の合同調査(1999年)の結果においては、約50%以上が違法伐採であると分析されている。
インドネシアは、政府が違法伐採の存在を認め、国際的な協力を求めている唯一の国。

・ロシア

環境NGO等の調査によると、20~30%が違法伐採であると言われている。
ロシア政府は違法伐採は1%に満たないとの見解。

 

あとがき

違法伐採は、世界の森林破壊だけではなく、代々住み続ける民族の暮らしや文化を奪っています。

2008年以降に、米国、EU、オーストラリアという先進諸国が、違法伐採木材の取引を禁止する法規制を導入したのですが、木材消費国の日本は、後れをとっているという指摘がされています。

このような環境犯罪を防止するためには、象牙と同じように供給現場での取締りをさらに厳しくすると同時に、消費段階において違法性が疑われるものを購入しないという消費国の対応が求められています。