最近では、アマゾンの熱帯雨林の火災、インドネシアの森林火災もあり、大きな被害が発生しました。
前回の記事でも紹介しましたが、世界中で山火事による人的被害、森林崩壊が加速しています。
2019年もいくつかの地域で大規模な山火事が発生しました。

その中でも、オーストラリアで起こった山火事も大規模となっており、多くの被害が確認されました。
またこの被害にあったのは、人間だけではなく、多くの動植物の生息地が山火事によって奪われることになり、絶滅が危惧されているコアラも、山火事で生息地が奪われ、絶滅に一層近づいてしまうのでは、と懸念されています。

オーストラリア人が炎の中からコアラを助け出す動画がこちらです。

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この動画がネットで拡散し、火傷を負ったコアラを救おうという声が高まりました。
そしてコアラ専門病院のポートマッコーリー・コアラ病院は、クラウドファンディングで寄付を募り、現時点で4万人近い人々から約170万ドルの支援金を集めています。

ポートマッコーリー・コアラ病院では、集めた資金で、火災で棲みかを失ったコアラのための水飲み場を作る計画があります。
助けられたコアラは「ルイス」と名付けられ、コアラ病院で看病されましたが、胸や脚に重度のやけどを負い、回復が見込めないことから安楽死という結果に。

山火事はこのように、多くの悲しい結末を生み出してしまったのです。

オーストラリア・コアラ基金によりますと、火災によって1000頭以上のコアラが死亡し、コアラの棲みかの80%が焼失したと試算。
同基金は「コアラが理論上の絶滅の危機に直面している」と発表しました。

大人のコアラに必要なのは、1日あたり約900グラムのユーカリの葉。
火災で焼かれたユーカリの木が再び葉をつけるまで、少なくとも数カ月が必要で、多くのコアラはその間、餓死の危機に直面することになるのです。

環境保護団体は政府に対し、コアラ保護法の施行を急ぐように求めており、議会は2016年に、ユーカリの木を守ることや、コアラのハンティングを禁じる法律を議会で可決しましたが、未だ正式な施行には至っていないのが実情です。

目次

オーストラリアの被害状況は??

2019年から続く、オーストラリアの山火事の原因は何なのでしょうか?
始まりは昨年の9月。
オーストラリアの南東部、ニューサウスウェール州で山火事が発生。
消火活動が行われましたが、2020年時点でも山火事は継続し、1月5日現在、このような被害状況となっており、今後はさらに拡大が予想されます。

  • 24人死亡
  • 1400件以上の民家が崩壊
  • 1000万人以上の人々が煙による大気汚染で体調に影響
  • 5億匹の動物が死亡
  • 8000匹のコアラが死亡
  • 550万ヘクタールの森林が消失

550万ヘクタールといえば、ベルギーの面積や、日本の九州を四国を合わせた面積と同じくらい大規模なのです。

実は、オーストラリアでは1983年にも、ビクトリア州とお隣のサウス・オーストラリア州にまたがる、大規模な森林火災が起きていました。

このときも52万ヘクタールが焼けています。

この山火事はオーストラリアの森林火災の中でも過去最悪と言われ、都心部のシドニーでも、山火事による煙が空を覆い、非常時宣言が出され、危険なレベルの大気汚染が発生している状況です。

都心部でのシドニーでも??
と思うところですが、火の粉は30Km先まで飛ぶと言われています。
例えば、八王子で発生した山火事が東京都心部まで来ること可能性があるということ。

そのため、シドニー都心部でも山火事の煙が流れ込み、窓を開けられない状況が続いています。
大気汚染は、世界最悪と言われるインド首都、デリー都市圏と同等のレベルの汚染濃度になりAQI(大気質指数)は186を測定。

またシドニー市内でも節水条例が出され、住民が避難しなければならない状況に陥っています。

 

山火事の原因は何だったのか?

まず海外と日本では、森林火災の原因は異なることが多いのです。
林野庁のホームページによりますと、日本で山火事が起きる場合、その原因は放火や火の不始末といった人為的なもが大部分を占めます。

対して、オーストラリアを含めた海外では、自然発火が多くあります。
オーストラリアは熱帯雨林もあるのですが、砂漠気候もあり非常に乾燥している国。
真ん中のウルルがある地域は、ほとんど砂漠です。

この砂漠では、木が無いため火災は発生しないのですが、森林地帯になると自然発火の要因が多くなるのです。

 

発火の主なメカニズム

夏に雨量が多く、木が生い茂る
→冬は雨が少ないケースが多く、枯れ葉が積もります
→大陸風の影響で枯れ葉同士が擦れる
→気温が上昇し水分が蒸発するため、着火しやすくなる
→風に煽られて火災が広がる
→大規模な火災が発生

また、今回のオーストラリアの山火事については、落雷も出火原因に挙げられています。
落雷によって、木や落ち葉が送電線の乗り移ることによって出火です。

さらに他の原因となっているのがどこにでも自生しているユーカリの木。
この葉っぱを手にとってみると、少しねちゃねちゃします。
実はユーカリの葉っぱは、大量のユーカリ油を含んでおり、太陽の熱により自然発火するのです。
ユーカリの葉はテルペンと呼ばれる生成物質を放出しており、このテルペンは引火性があり、気温が上昇すると量が増えます。

そのため、夏に気温が上がりユーカリの葉から引火性のあるテルペンが、大量に放出されることによって火災を起こし燃え広がります。
公園とか市街地にあるユーカリの木は問題ないのですが、これが森林地域になると山火事の原因になるのです。

そして、同国は広大な領土を持つことから、延焼は大規模になることが多い。
同国の前回の山火事は、2009年2月に発生したもので、南東部ビクトリア(Victoria)州の町や集落を次々と襲い、173人が犠牲となりました。

 

なぜ今年は被害が大きいのか?

オーストラリアではここ1年間、各地で最高気温の記録を更新し、2019年9月は観測史上最も暑い月になりました。
そして、ニューサウスウェールズ州では冬季の降水量が例年より少なく、山火事が発生する条件が整っていたのです。
降水量が例年より多かったことも加わり、草木がより成長。
これらの草木が乾燥し、山火事の「燃料」が増えたのです。

 

どうやって消火活動をするのか??

消防隊の主な任務は、火の手から「燃料」を奪うことです。
「迎え火」と呼ばれる方法は、先に木々を燃やしておくことによって、空き地を作ることによって火の進む方向を制御するものです。

例えば、北海道や名古屋に大通公園という街の中心を走る通りがありますよね。
これは、例えば街全体が火災に火災になった場合に、空き地(公園)を作ることによって、これ以上燃え広がならいようにするためのものなのです。

しかし、オーストラリアで大麻を栽培している男が、山火事から大麻を守ろうと「迎え火」を試みた結果、失敗してしまい火が燃え広がってしまったのです。
このように、自分で身を守ろうと、何らかの理由で人為的に火災を引き起こたことも原因となっています。
もちろん、この迎え火は、経験ある消防隊員が行えば有効ですが、素人が行うと失敗します。
他には、陸からの消火活動に加え、空からは火に直接水をまく空中消火が行われています。

 

山火事は無くならないの?

気温が高く乾燥した気候のオーストラリアでは、干ばつが頻発するため山火事が誘発されることが多く、一部地域では年間を通して山火事が発生します。

なぜオーストラリア政府は有効な対策が打てないのでしょうか?
日本人ならそう思うところですが、山火事によって、土地に栄養を循環させていくという優れた自然再生のメカニズムが関係しています。

オーストラリアではもう何千年も前からあった山火事と隣り合わせです。
しかし、これは自然の摂理とも言えます。
非常に貧弱な土地のため、自然が自ら焼畑栄養を行っていることにつながり、昔の人はこれを歓迎していたこともありました。

また、ユーカリの葉っぱが燃えやすいことは上記しましたが、実は、ユーカリの木は、山火事などで種が加熱されることによって、発芽しやすくなる種類があります。
燃えるのは表皮だけとなり、内側は火事から生き残ってさらに成長するのです。
オーストラリアでは、このような流れでこれまで国が成長してきた歴史があります。

オーストラリアだけではなく、痩せた土地では山火事が発生しています。
例えば、
2007年にはギリシャで17万ヘクタール。
2016年にはフランス南部でも約2300ヘクタール以上が焼失。
2017年1月には、南米・チリ中北部で37万ヘクタール以上が焼ける火災が起きています。

 

あとがき

最近はyoutube動画でもよくキャンプ動画があり、オーストラリアでは、世界屈指のキャンプ天国で、キャンプが出来る国立公園や、国立のキャンプ場が多くあります。

夏の気候が良い時に、キャンプに行くのは自殺行為になり、いつ、自然発火してもおかしくない状況です。
そのため、オーストラリア人の間では、夏の山キャンプはNGで、キャンプに行くなら、ビーチというのが定説になっています。

また、どこの森林部や国立公園でも、夏は火を使う事を禁止しているため、キャンプに行っても火は使えません。
そのため、何か行動するときに、それが環境へ負荷をかけていないのか、一旦立ち止まり考えることも大切です。
小さな意識でも、それが環境の負担を抑え、災害を減らし、悲劇を減らすことになるかもしれません。